鋳肌【いはだ】とは?熟成するFUTAGAMIの真鍮製品の特徴
鋳物(いもの)の肌と書いて【いはだ】と読みます。耳慣れない言葉ですよね。私たちも聞かれることが多いので、FUTAGAMIの製品の一番の特徴と言える鋳肌仕上げと合わせて解説させていただきます。
FUTAGAMIの鋳物はほとんど全ての製品を生型鋳造法という製造方式で作っています。簡単に言うと、中に空洞のある型を生砂を固めて作り、その空洞に溶けた金属を流し込んで、冷やして固めることで製品を形づくります。
これはMATUREWARE「棚受け 穴あき」の砂型です。端的に言えば、製品の上半分と下半分それぞれ造型して枠を合わせます。その枠へ金属を流し込んだ時に、この砂型の砂と金属が直に触れた表面が「鋳肌」です。
これが原型です。空洞を作るために、製品と同じ形の原型を使います。
FUTAGAMIの製品のほとんどは、この鋳肌をそのまま生かして、切削したり磨いたりせずに、必要最低限な仕上げだけを施して、砂型の模様をそのままに、表面は無垢の真鍮のままで製品にしています。製品の機能上、削ることが必要不可欠な部分は削りますが、不必要に削ることはありません。(一部の製品ではあえて削って仕上げているものもあります)
砂を使った造型ですので、金属を流し込んだ時に砂が崩れて一緒に流れ込み、製品の表面に現れてしまったり、金属の勢いで形が崩れてしまったりします。また、造型の力加減を誤ると、製品の表面にヒビが入ったりスジのような突起ができてしまうこともあります。
製品の表面を削ることが前提であれば、形の崩れを削ったり穴や凹みは溶接をして埋めたりと様々な方法で整えることができます。
当社でも昔からの仕事として製造している真鍮仏具など、周囲を全体的に削る製品については、後から修正ができますし、削り終わった時点で問題がなくなることが多いです。(現在FUTAGAMI第二工場で製造している真鍮仏具の製品はほとんど全て削ります)
第二工場で製造の灯篭 この仕事の場合、全体的に周りを削って整えています。部品同士を組み付けるために溶接もします。この後、着色などが社外で施されて商品になります。
しかし、FUTAGAMIの鋳肌仕上げではお客様の手に触れる部分や見える部分は「削らない」ことが前提です。鋳造後に大きく修正したり整えることをしていません。ツヤを出すためにブラシをかけることも一部を除いてほとんどありません。(お客様が手に触れた時に、手に怪我をしたりしないようにだけ整えます)ここが他の真鍮製品とFUTAGAMIの製品との違いです。
手に触れた時の表面の滑らかさや、無垢の真鍮独特の穏やかな経年変化。FUTAGAMIならではの「鋳肌仕上げ」が生み出している一番の特徴です。
「経年劣化」という言葉も辞書に存在しますが、私たちは「劣化」ではなく経年変化を良いものと捉えています。例えば、革の財布やバッグ、木の家具も使って年数が経つと良い雰囲気が出てきますし、衣服で言えばジーンズは履きこむと、その人だけの色に変わってオリジナルになっていきますよね。FUTAGAMIの製品についてもそれらと近いことが言えます。それ故に私たちは「劣化」ではなく「熟成」と呼んでいます。
私たち人間は生き物ですので歳をとります。その分、重ねた時間や経験が人を豊かにし、人生を成熟させてくれます。FUTAGAMIの真鍮鋳肌のアイテムはその過程を共に過ごしながら熟成していきます。FUTAGAMIの鋳肌が私たちにもたらすのは、時の流れをじっくりと楽しめるような穏やかな心の有り様だと言えます。熟成していくものと共に、自分たち自身の「成熟」に喜びを感じながら生きていく-豊かに暮らすヒントをFUTAGAMIのアイテムは与えてくれます。
鋳肌で仕上げるために、FUTAGAMIでは砂型の造型〜仕上げ作業まで、全工程それぞれで様々な観点から気を配って作っています。また鋳肌は商品ごとに全て表情が違う一点ものとも言えます。これからも当たり前に良いものを作り続けられるよう、ものづくりに励んでいきます。
もしショップなどで目にされる機会がありましたら、表面の仕上げをぜひよくご覧になってみてください。実際に持って手に触れると手触りの良さも感じていただけるかと思います。